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境野 学の現代金属彫刻 制作方法
ブロンズを素材として制作していますが、ブロンズを木彫や石彫のように直接彫っているわけではありません。
金属を成型する方法は、削る叩くといった加工法があります。
しかし、複雑な美術品を作るには適していません。砂などで作った型(鋳型)に金属を過熱溶解して流しこんで目的の形を成型するのが手っ取り早いといえます。これを『鋳造』といいます。
『鋳造』の歴史は古く紀元前3000年頃に始まったとされています。古墳から出土する剣、鏡、銅鐸、貨幣などが代表の鋳造品です。『手っ取り早い』とはいいましたがその工程は複雑です。まず鋳造の元となる原型を制作します。鋳造はここからがスタートです。
詳細は左のメニューにある各コンテンツをご覧下さい。写真を沢山使い、できるかぎり分かりやすくするように努めました。
鋳型作りのための道具、材料
鋳型つくりで使用する道具です。 左から型についた 砂粒等をはらうためのハケ。 鋳物砂を整えるためのへら各種。 ガスのかかりをよくするためのガス針。 鋳型を削るための鋸やすり。 最後にガスが出るホース。 上の軍手の中には型の境目につける白い粉 が入っています。(ポーター、パーチィング粉) |
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型の補強に使う鉄の筋金と切断カッター。 | 銅のインゴット。これを溶かして鋳造します。 | ||||
筋金を曲げるための油圧の機械。 | ブロンズを溶かす炉と、とりべ。 | ||||
鋳型作り
鋳型(外型)の作り方を見ていきましょう。外型つくりの基本は原型を鋳物砂でくるんで原型を鋳型から抜き去る事です。2002/6/24 |
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原型を鋳型から抜き去るためには型を上下半分に分かれるようにします。 上の写真の右側がわかり易いです。原型のちょうど半分のところで台型を作ります。この作業を『見切る』といいます。 | 原型が鋳型から抜けるように『ヨセ』をつけます。写真右。ヨセは抜けやすいようにななめにします。抜け勾配といいます。型にあわせ筋金をくみます。 |
筋金を組みます。原型の保護のため薄く砂をかぶせてあります。 | 肌砂をかぶせ粗砂をかぶせ筋金を乗せ、また粗砂をかぶせます。 |
ガスをかけます。ガスをかけると砂は固まります。これで下型の完成です。 | 下型をひっくり返して上型を作ります。 |
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上型です。きれいに型どりされました。下型から原型をぬきます。 | |||||
ブロンズを流すための湯道を掘ります。 |
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2002/6/24 | |||||
黒くなっている所が塗型した所です。 |
塗型するとブロンズから砂が剥離しやすくなります。 | ||||
中子つくり
外型に湯道(ブロンズをながすための通路)を切って一つに合わせてブロンズを流しても形にはなりますが、とてつもなく重たくなってしまいます。鋳肌も汚くなります。作品を空洞にしてブロンズの厚みを一定にすれば軽くなりますし綺麗な鋳肌になります。ブロンズの厚みを一定にするために中子を作ります。2002/6/26 |
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ブロンズの厚み分の油土を型にはっていきます。 | 油土の上に中子砂をつめます。補強のために筋金を入れます。 |
これで中子の半分は出来ました。この中子は細長いのであらかじめ分割できるようにしてあります。『切り中子』といいます。中子の制作過程は作るのに夢中になって細かく写真が撮れませんでした。本当は細かい事が沢山ありますが書き出したらきりがないので簡単に書きます。2002/06/27 |
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中子、小型を型にしっかりしばります。ポーターをつけます。 | 今度は下型の中子をつくります。 |
中子が半分ずつできました。のりをつけて型を合わせます。 | 中子を合わせました。 |
今回の作品は同じ原型から2つ型をつくって完成させます。鋳造だからこそできる技です。ですから同じ作業をもう一回します。 |
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最初に合わせた型をはぐって中子を取り出します。2002/7/2 |
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中子を型から取り出しました。 | もう一つの中子です。 |
もうひとつの型の中子つくりの様子です。2002/7/3 |
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中子を合わせてから上型をはぐったところ。 | 小型を抜きます。 |
油土をはがせばそのぶん隙間ができます。それがブロンズの厚みとなります。 | 切り中子の片方を抜いたところです。 |
中子を全て型から抜いたら中子のバリや合わせ目を肌砂で埋めたりして仕上げます。最後に耐熱性の向上や砂の巻き込みを抑えるため『塗型』します。『塗型』は黒鉛をアルコールで溶いたものを塗ります。 |
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2つ分の型の中子の塗型が終わったところ。 | |
以上で中子つくり完了です! | |
鋳込み
外型、中子ともに完成したらいよいよ鋳込みです。簡単に言えばブロンズを加熱溶解して型に流し込む事です。鋳造の工程で最も緊張する瞬間です。2002/7/5 |
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中子を型に収めて湯圧に耐えるようにしっかりしばります。 | ブロンズを溶かしているところです。 |
湯の温度は約1250度です。とりべに湯を入れます。 | 10秒も入れていないです。その短い時間で全てが決まります。苦労は報われるでしょうか? |
湯をいれ終わった後、上型を取ったところです。なんとか上手く行ったようです。 | |
仕上げ
鋳込みが終わって、ほっとしたのもつかの間、次は仕上げです。湯道やバリを取ったり、溶接といった作業をします。 |
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仕上げで使う道具 |
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左からやすり各種、たがね各種、たがねを打ちつける金槌、エアー駆動式リューター2種類、電動ディスクグラインダー研磨用と切断用 | 自動溶接機 |
2002/7/6 |
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サンドブラストをかけて作品にこびりついた砂をとっていよいよ仕上げです。 | 手前のは湯道を切断してあります。 |
2002/7/8、9 |
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型境にあるバリをとります。 | ひたすらとります。 |
2002/7/10 |
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バリ取りは終了しました。 | いよいよ溶接です。 |
溶接終了です。白いのは溶接のスパッタ防止のために塗ってあります。 | |
2002/7/11 |
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溶接したところを仕上げます。 | 作品側面を平らにします。 |
最後にブラストをかけます。 | |
仕上げ終了!後はブロンズを薬品で腐食させて色付けをします。 |
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完成作品 『プロメテウスの眼』
プロメテウスは予見する者の意である。プロメテウスは全てを予見している。 私たちが先を見通す力を得ようとして、プロメテウスの暗い瞳の中をのぞいても先は見えそうで見えない。 私たち人間は不確実な希望をたよりに生きる。できるだけ大きな望みを抱いて、それを実現するために力を尽くす。 それが私たち人間の生きる意欲と力となっている。
"プロメテウスの眼" |
左側面 |
正面左側部分 |
透明の台の製作は竃xプラスチック富山に大変お世話になりました。ありがとうございました。